2002年版 風の盆メニューの後ろの能書き

明日香では、もうずっと以前から風の盆にはメニューの品数を減らして対応しています。
そんな風の盆メニューの後ろに、99年からずっと明日香流の「おわらの心得」を書くようになりました。単に、同じことを何度も言うのがだやい(=富山弁:だるい、面倒)ので書きはじめたのですが、これがいろんな方から好評を得ております。
だいたい毎年同じ内容ではありますが、年々、変わりゆくおわらと共に、その掲載内容もびみょ〜〜〜に変わってきてます。
そんなわけで、2002年版のメニューの後書き登場です!99年版と比べてみて下さいませ。

ではここよりスタート!

明日香より観光客のみなさまへ。
 
 風の盆へようこそいらっしゃいました。初めての方も、何年も通っておられる方も、皆々、ご苦労さまです。近年の爆発的な観光客の増加で、ますます対応に頭を抱えている八尾町です。
さて、ここでちょっと明日香からのアドバイス。古き良き風の盆を今さら返せと言っても無理なこと。ならばせめてこれ以上壊れないように、皆様にもご協力願いたい。

 風の盆は地元の人が主役の年中行事です。基本的には観光客に見せる為ではなく、自分達が楽しむ為に行っております。(と、何年も言い続けてきましたが、ここまでくるとそうも言っていられない状況になっているのが現実です。とほほ・・・)
たかが自己満足のために一年通して練習を積んでいる「おわらバカ」の楽しみにしていた3日間です。そんな彼らの邪魔にならないようにしてあげて下さいね。


〜「風の盆」の流れ〜
 初めていらっしゃった方のために、風の盆中の流れを簡単に。1日・2日は午後2〜3時ごろから各町内一斉に街流しが始まります。各町内の「踊り場」とある場所をスケジュールの順番にまわります。(スケジュールは各町の公民館に貼り出されていますよ)
夕食時間はどこの町内も休憩(だいたい6時〜7時ごろ)。夜の部は7時頃から10時頃まで。ただし、総合演舞場(旧競演会場)の当番の町内はもぬけのカラになりますのでご注意。
その後10時から12時までは上新町、西新町などで輪踊りを行ってますので、観光客の方々も一緒に踊っていただける時間になります。
ここまではスケジュール通りの観光客向け営業時間。12時をまわると、それぞれ好きなもの同士が集まって、好きなように「おわら」を楽しむ時間帯になります。誰がどこで何時から何時までやっているかはまったく未定。
3日の日中は「のど自慢大会」があるだけで、街流しは夜の部からはじまります。その後は1・2日と同じように行事は4日の明け方まで続きます。
 そんなわけで、「三日三晩踊り明かす」とは言っても、ご飯も食べますし、睡眠もとります。午前中からいらして「どこでおわらをやってるの?」なんて聞かないように。



〜カメラをお持ちの皆様へ〜
 プロ・アマ問わず、もちろん「写るんです」を持ってる方も!夜おわらの写真を写すときはフラッシュはなるべく控えて下さい。特に、深夜12時をまわってから明け方にかけては厳禁!!って言うと、でっかいカメラを抱えたそこのあなたは「フラッシュたかずに撮れるか!」とムッとしてるんではありませんか?それはまあごもっともなんですが、演じている側にとって、暗闇でのフラッシュ攻撃は、寝不足の眼と頭に突き刺さるようなダメージを与えてるんです。そして何より気分が台無し!真夜中の自由な時間にフラッシュ攻撃に会うと、途端に演奏を止めて家に帰ってしまいますので、十分お気をつけくださいませ。
 それから、カメラを持っているからと何を勘違いしてか輪の中に入ったり、我こそはと人を掻き分けたり、馴れ馴れしく話し掛けたり。カメラマンのマナーの悪さは年々閉口モノ。
あなた方に八尾の踊りを壊したり、気分を悪くさせたりする権利はまったくありません。出来れば、「撮らさせてもらってる」という位の謙虚な気持ちで良い写真を撮っていただきたいものです。


〜深夜のおわらはお静かに・・・〜
 「明け方のおわらがいい」というのが広まって、ずいぶん夜中まで頑張る観光客の方々が増えました。来るなとは言いませんが、とにかく静かに!深夜の「おわら」はじっと「音」を楽しんで下さい。主役は踊子より、地方(ジカタと読みます:楽器を弾いたり、歌い手の人達の事)に移ります。交通規制が解除になったからといって、街の中に車を乗り入れるのもなるべく避けて下さい。車窓から眺めるなんてとんでもない!エンジンとライトは即切るべし!!


〜八尾は観光地になりきれてません〜
 ここは観光地じゃない!と言い切っていたのですが、なんだかだんだん観光客によって観光地に変わりつつあります。今後どうなるかはさておき、現在の八尾は、環境はもちろん、人の心もまだまだ観光地化されておりません。
「他に見るところがないの?」「食べ物やさんが少ない〜」「八尾のお土産はなにがあるの?」など、そんな言葉ばかり聞きます。しょうがないですよね、八尾は普段な〜んにもないところなんですから。365日のうちのたった3日のために、レストランやら宿泊施設を増やすことはなかなか出来ません。
 そんなわけで、この喫茶店も観光客なれしてませんからね〜。ちょっとぐらい(いや、かなり)無愛想でも許して下さいませ。


〜雨が降ったら誰が何といおうと中止なのです〜
 これも毎年取り沙汰される問題。風の盆3日の間には、必ずといって良いほど雨は降ります。そして、雨が降ったら中止なのはずっと昔から変わりません。
理由は単純。衣装や楽器を濡らしたくないから。特に1〜2日は、まだ「明日」が控えているので、三味線や胡弓の皮が雨や湿気で剥がれてしまうのは、絶対に避けたいのです。
が、観光客の方々には、どうしても理解していただけないようです。
特に、降ったり止んだりの雨は、運営側も判断の難しいところ。「せっかく遠くから来たのに」「テープでもかけて早くやれ!」あげくの果てに「こんなところ、二度と来るか!!」などなど、苦情もここまで来ると、反論する気にもなれません。
八尾のおわらは、「観光客に見せるため」が最大の目的ではなく、「自分達が楽しむため」にやっております。どうか、ご理解いただけないからと言って、石を投げたり、罵倒したりは止めて下さいね。(ほんとにいるからコワイよねー)


〜観光会社、TVの情報に踊らされないで!〜
 爆発的な観光客増加は、TVで過剰美化され放映されちゃう事と、それに目をつけた観光会社の暴力的なツアー客送り込み作戦に原因がありそうです。どんな思いでいらしてもそれは個人の自由ですが、観光客と演じる側にはずいぶんとおわらに対するイメージの隔差があるようです。「哀愁」「幻」「物哀しい」「静」などなど、TVで聞いた通りのキーワードをお持ちのようですが、一度それらをすっかり忘れて、ご自身の目で感じ取っていただきたい!
ちなみに地元としては「楽しい♪」「わくわく」「動」「熱」・・・そんな言葉が浮かぶかな。子供の頃から楽しみにしていた一年に一度のお祭りという点ではどこも同じだと思いますよ! 以上、明日香から皆様へのアドバイス兼お願いでした。



明日香が風の盆の3日間、入り口に「カレーとコーヒーしかありません、団体客お断り!」の張紙をするようになってどれくらいたつでしょう。あまりに対応にてんてこ舞いで、おまけにやたら不躾な観光客が増え、「だったら入り口で少し振り落とそう!」と考えた苦肉の策でした。そのお陰で、文句を言いそうなお客さんは、「イヤだわっ!こんな高飛車な店!!」と、あまりいらっしゃいません(作戦成功(笑))
 明日香がオープンした22年前から考えても、随分と風の盆も八尾町も変わってしまいました。ひなびた田舎でこそ可能な静かな祭りに焦がれてやってくる都会の人々は、同時に大量の集客能力と移動手段、過ごしやすい「観光地」をこの町に要求されているようです。
そんな中、実際におわらを演じる人達は昔ながらのスタイルを守ろうとしております。サービス精神もあまりなく「何様のつもり?!」という苦情もあり、そんな頑な態度が皆様との衝突に繋がる場合がある事もよく耳にしております。
が、観光客に媚びる事のない頑固な姿がいつまでも続いて欲しいと願ってしまうのは、地元民の我がままなのでしょうか・・・。

Have a nice trip!

2002年 風の盆


[ 99年バージョンはこちら ]

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